弁護士にできること 鉄道への飛込みによる自死

鉄道事故の流れ

1 事故の発生

鉄道事故の多くは、ホームからの飛び込みや踏切から線路への侵入によって起こります。

2 鉄道会社からの連絡

鉄道事故が発生すると、鉄道会社から遺族のもとへ連絡があります。始めの連絡では、請求することをほのめかされるだけで、請求金額までは言ってこないことが普通です。49日を過ぎたころに2度目の連絡があることが一般的です。2度目の連絡で具体的な金額が提示されることが多いです。
なお、鉄道会社から請求が来ない場合もあります。請求が来るか来ないかの基準は不明です。

3 鉄道会社から請求があった場合は

請求金額が妥当なものかどうか確認する必要があります。明細を求めるべきでしょう。明細を求める際には、「請求を認めるわけではないが・・・」という留保を付けておいた方が無難です。

4 請求額について

マスメディアなどでは、鉄道事故があると数千万円~数億円の請求があるなどと言われています。たしかに、請求額がそのような金額になる場合もあるのかもしれません。もっとも、数十万円ということもあります。
ですので、具体的な請求金額がわかるまでは、あまり心配しなくてもよいでしょう。

5 具体的な対処方法について

一番簡単な対処方法は、相続放棄です。鉄道事故の損害は、亡くなった方に発生する損害賠償債務を相続人が相続するという形をとります。ですので、相続人が相続放棄を行えば、鉄道会社が請求をする根拠がなくなります。相続に関することは、相続のページを参考にしてみてください。ここでは、鉄道事故によくある注意点について述べます。

1つ目は相続の範囲です。相続ではプラスの財産もマイナスの財産も相続することになります。ですので、相続放棄するとプラスの財産も放棄することになります。鉄道会社の請求額やその他の負債とプラスの財産を比較して、相続放棄するかどうか決めましょう。

2つ目は、熟慮期間です。相続が発生したことを知って3か月を経過してしまうと相続放棄できなくなってしまいます。ですので、その熟慮期間中に相続放棄をするか、熟慮期間内に相続放棄できない事情がある場合は、3か月の期間を延ばしてもらう手続き(熟慮期間の伸長)を家庭裁判所で行いましょう。

3つ目は相続人の範囲です。相続放棄が行われると、放棄をした相続人は初めから相続しなかったことになります。ですので、次順位の相続人に相続が行われることになります。例えば、父が死亡して、子が相続放棄をすると、父の債務は直系尊属(祖父)に相続されることになります。相続放棄を行う場合は、すべての相続人が相続放棄を行う方が無難でしょう。

相続放棄ができない場合はどうするか。

限定承認という方法が考えられます。限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済することを留保して、相続の承認をすることです。限定承認は、相続人全員で行わなければならないこと、手続きが煩雑であること、相続財産管理人を選任しなければならないこと(その際に裁判所への予納金が必要になること)等からあまり利用されていないようです。相続放棄や限定承認をしない場合、相続人は、原則、鉄道会社に対して損害を賠償することになります。賠償することになったとしても、注意点があります。明細を求めることは先述しました。その内容をよく確認しましょう。根拠がよくわからない金額も乗せられているおそれがあります。また、亡くなった方に精神疾患があった場合は、その旨を主張しましょう。責任能力がなかった又は減退していたとして、損害賠償義務を負わない又は金額は減額すべきだという交渉を行うとよいでしょう。

6 弁護士のかかわり

鉄道会社との交渉は困難を伴う場合が多いです。ですので、鉄道会社から請求があったら、専門家である弁護士に相談・依頼した方がよいでしょう。
もちろん、鉄道会社から請求される前に、相続放棄等について弁護士に相談・依頼しても構いません。