遺族のみなさまへ


「弁護士による自死遺族相談室」は、きよし弁護士(細川潔)と、たかし弁護士(和泉貴士)が2019年から一緒に書き溜めていたブログを、ホームページの形に進化させたものです。

もともときよし弁護士とは大学1年生(かれこれ20年以上昔の話です。)の頃からの友人で、司法試験受験の勉強仲間でもありました。
弁護士になって以降も、二人とも労働事件を得意とする事務所に就職したため接点も多く、たかし弁護士が自死に関する法律問題に本格的に取り組むようになったときに、きよし弁護士にも協力をお願いしたことをきっかけに、二人で事件に取り組むことが増えていきました。

労災、賃貸借、生命保険、鉄道事故など、自死を契機に発生する様々な事件を担当したり、遺族からセカンドオピニオンの相談を受ける中で、私たちが痛感したのは専門家が少ないということでした。
自死にまつわる様々な事件について、ひととおり経験があり、初動段階で正確な判断ができる弁護士が必要です。また、情報が少ない中で諸々の法的対応策が分からず、困っている遺族にも多く出会いました。「弁護士による自死遺族相談室」は、遺族や遺族を支援する弁護士の役に立つような、いわば公的な性格も併せ持つホームページにしたいと考えました。

もう一つ、事件処理を通じて感じていたのは、総合的な支援の必要性でした。
遺族が抱えるトラブルは多様です。法律だけで解決できるのはごく一部、基本的には遺族の人生の中の経済的な部分です。他方で、経済的な問題以外の問題、例えば遺族の体調や感情、どのような人生を歩むかといった問題を抱え、苦しんでいる方を私たちは多く見てきました。
同じような問題意識から医学や心理学を学ぶ弁護士もいますが、全てを私たち自身の力で解決しようとしても個人の努力には限界があります。重要なのは、他の支援者や遺族団体とつながり、「社会全体」でリスクを分散し共有すること。まだまだ不十分ではありますが、私たちは遺族団体、支援者団体、宗教家、医療など事件を通じて知り合った多くの方と連携し、遺族にとって必要なアドバイスやサービスが提供できればと考えています。

亡くなり方で、亡くなった人の人生の価値は本来変わらない筈です。しかし、 残念なことですが、社会の中には自死に関する様々な誤解や偏見が多数存在しま す。亡くなった人も遺族も、一人の人間として尊重される社会であって欲しいと 願います。私たちは、遺族自身が悲しみの中にありながらも安全に暮らせるコミュニティの 構築を目指したいと考えています。そしていつの日か、自死を生み出し遺族を苦 しめる様々な社会の矛盾が解消されることを目指して、今後も私たちのできる努 力を続けていきたいと思います。